網膜色素変性症は日本の失明原因のトップ5に入る病気でありながら、長年治療法のない病気として、眼科医、患者様を悩ませてきました。
網膜色素変性症に効果があるとされる内服薬もありますが、特効薬とは言い難く、残念ながら失明状態になってしまって、その後どうすることもできないことがしばしばあります。
しかしながらここにきて、この病気を改善させる治療法がいくつか出てきています。これはすごいことだと思います。
現在、注目されている新しい治療法は
①遺伝子治療
②再生医療
③Optogenetics
④人工網膜
といったものがあり、④の「人工網膜」は日本およびアメリカやドイツなどで実際の患者様に行われ、成果をあげています。
人工網膜とは
簡単に言うと、網膜色素変性によって眼の痛んでしまった部分の代わりに、すごく小さいCCDカメラで代用しようということです。
メガネにCCDカメラをくっつけて、そのCCDカメラの映像を体内に埋め込んだ小さな装置などを経由させ、眼球に送り、物が見えるようにする、といったものです。
今はまだ「ばっちり物が見える」というわけにはいかず、また本来のナチュラルな見え方とはかなり違うようで、物の位置がわかる程度の見え方らしいのですが、中には今までほとんど物が見えなかったのに、茶碗とお箸の区別がついたりするようになった例もあるようです。
ほとんど物が見えなくなってあきらめていた方がここまで回復するのは素晴らしいことだと思います。
今後、CCDカメラやその周辺機器の性能はどんどん上がっていくと思うので、私個人的には、「これは将来、現状よりも相当なところまで見えるようになるのではないか」と期待しています。
よくあるご質問
No.036-スティーブンス・ジョンソン症候群で眼科で「視力がでない」と言われた。
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)は飲み薬などの薬剤の副作用がで、高熱がでて、くちびる・口の中の粘膜、眼、外陰部や全身がただれる深刻な病気です。
年間100万人あたり3人くらいに発症しています。そのうちの3-10%は亡くなることもあります。
眼もただれるので、黒目の表面が凸凹になったり、黒目が濁ったりとという後遺症が残ります。そのせいで凸凹によるドライアイや、乱視のためにメガネやコンタクトでも視力が上がらず、再び見えるようにするためには角膜移植などの手術をするしかありませんでした。
しかしながら、最近これに対し、特殊な形状のハードコンタクトレンズを使用して視力改善させようとする治験が行われ、薬事承認を得たようです。
スティーブンス・ジョンソン症候群でただれた黒目は表面が凸凹しているのですが、このコンタクトはレンズの中心部が膨らんでいるので、黒目とコンタクトの間にスペースができ、そこに十分な涙が貯められる構造になっています。そのため黒目の凸凹があまり関係なくなり、また乾きにくくなっています。
実際の患者様ではこの特殊コンタクトレンズによって視力が0.05→0.5になるなど、満足感も得られているようです。
まもなく商品化されるかと思いますが、手術という高いハードルのみでなく、ハードコンタクトレンズで少しでも視力が上がれば、患者様もハッピーになると思います。
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