飛蚊症とは、眼の中の「濁り」です。
眼球の中は大部分が硝子体(しょうしたい)という透明なゼリーみたいな物質で満たされています。
この硝子体は99%が液体で、残り1%はヒアルロン酸とコラーゲンいう成分の割合になっています。
年を取ると、このうちのヒアルロン酸が減少してきて、さらにコラーゲンも縮んできます。
すると硝子体がしぼんできて眼の中に隙間ができ、濁ってきます。これを後部硝子体剥離(こうぶしょうしたいはくり)といい、飛蚊症はだいたいがこの後部硝子体剥離が原因です。
基本的に飛蚊症が自然に消えることはあまりありません。目薬や飲み薬で消すこともできません。
ただし飛蚊症=眼の中の濁りは視野の中心からずれることが多いので、日常生活に支障をきたすことはほとんどありませんが、「うっとおしくてしょうがない」と感じる方はとても多いです。
飛蚊症の場合、日本では、どこの眼科にいっても「目の中の濁りで、害はないですが、どうしようもないので我慢してください。変化があればきてください。」と言われます。
しかし、最近、アメリカでは手術をして飛蚊症を減らすケースが増えています。硝子体切除術(しょうしたいせつじょじゅつ)という手術ですが、本来これは白内障よりもリスキーな手術です。
以前は糖尿病網膜症や網膜剥離など、限られた網膜の病気にたいして行っていた手術でした。
しかし近年、23ゲージ、25ゲージ、27ゲージというタイプの、これまでよりも目を小さく切開できる硝子体切除術がでてきたので、手術による合併症のリスクがさがり、アメリカでは飛蚊症に対してもこの手術を行うことが増えてきています。
ただしリスキーなことに変わりはなく、アメリカのデータによると飛蚊症に硝子体切除術を行うと、1割くらいの人が後から網膜剥離になるというデータがあるようです。
それでも、うまくいって飛蚊症が軽快した場合は患者様の満足感が相当なものらしく、アメリカではたとえ1割のリスクがあっても飛蚊症を減らしたいという人が多いとのことです。
こういったことから将来は、日本でも「飛蚊症を手術で治す」という治療がひとつの選択肢になってくるかと思います。
手術を決断する場合はノーリスクではないことをしっかり理解して検討することが望ましいと思います。